Endear

First Chronicle　魔導士ルイン

【序章】残る史暦より

　言葉や数では計ることが出来ない遠い昔に、星は誕生した。
　厳密には「誕生した」ではなく、「創られた」という方が正しいかもしれない。
　星そのものはすでに存在し、星そのものはその時を待っていたのだ。

　無の空間に漂う幾多の星。元々の物質に光というものは存在しない。
　星が光を持ち、輝き、煌めきを放つためには命が必要だった。
　星に命を与えるのは神という存在。彼らだけが星に命を与えることが出来た。
　その神は創造神と呼ばれる。

　後に創造神は、命を与えた星に更なる恩恵を授け、生命を築き上げる。
　生命は彼ら自身で大地、風、水、あらゆる自然を誕生させ、星の繁栄を創り上げた。
　そして、人という生命が誕生し、星に無限の時間を与えたのだった。

　平等に暮らしていた人は時の流れに従い、進化を遂げた。
　何かのきっかけで現れた人という種族の分岐点。
　天使と悪魔、相対する者たちが星に誕生した。
　互いの姿、思想の違いから彼らは争いを起こし、永きに渡り戦った。
　それが「天魔大戦」と呼ばれる、星に生きる者の至上最初のすれ違いであった。

　天使と悪魔は相対する者たち。
　異なる力は衝突し、だが全く逆であるためにすべて相殺されてしまう。
　いくら時間が経とうとも決着は付かないまま、冷戦へと持ち越された。

　そしてある時、一方の種族はもう一つの存在に気付いた。
　自分達とは異なる空間に光と闇以外の要素がある。
　彼らが住む広大な場所を見つけてしまった。
　人間という種族が住む世界 ── ヴァーツィアである。

　堅固として宿敵との進展がない今、新たな動きを求めるには丁度良い。
　戦旗を揚げた悪魔達は、人間達の世界に侵攻し始める。

　世界ヴァーツィア VS 魔界オルセイア

　人間と悪魔の永きに渡る戦いが、始まった。