First Chronicle 魔導士ルイン

30. メモリートランス

『周りに敵となるような気配はありません。何かあれば私の護陣が発動します』
 進む先は一本の通路。妃砂が辺りを詮索する。
 ガロが飛び去った道は始めこそ普通の廊下であったのだが。進んでいくうちに、どこからか異臭が漂ってきた。嗅いだことのある臭いにルインはぽつりと呟く。
「血の臭い…」
『これは、悪魔同士で争ったようですね』
 床や壁に目を向けると至る箇所に青と黒が混じった液体が飛散していた。悪魔の血だ。肉片と思われる物体や骨のようなものも落ちていた。それらが異臭の元だった。
 通路を進むほどに散らばる流血が激しく、酷くなる。ルインが訓練場に辿り着いた時、その原因は概ね推測できた。

 訓練場でガロは待っていた。大広間のような場所だったが、場内には悪魔の遺体が積まれている。積み重なる遺体の上で退屈そうにしていたガロだったが、ルインが来たことに気が付くとご機嫌な様子で笑みを浮かべた。
「ようこそ、訓練場へ♪ 待ちくたびれたよ。さぁ、早速始めようか」
「その前に答えろ、周りの遺体は何だ?」
「ああこれ? 見てわかるだろう? 僕に負けた者の成れの果て。僕の遊び場なんだ」
「……」
「知っていると思うけど魔界はね、実力主義の世界なんだよ。弱い奴はこうなる運命なのさ」
 実力主義。強いものが世界を制す。弱肉強食と言われれば当然なのかもしれない。しかし、この有様はただの残虐だ。相手を問わない非情行為。ルインは、鋭い瞳で悪魔を睨んでいた。
 悪魔は遺体の上から飛び降りると両腕を広げて言った。
「さて、ここの話は終わりだ。いつでもかかっておいで?」
 ガロは様子を伺うためなのか、先にどうぞと言わんばかりに動こうとはしない。
 ルインは間合いを保つように距離をとり、杖を構えた。とん、と魔導杖を地面に立てて、最初の魔法を速やかに組む。
「赤き螺旋、その業火を我に示せ、バーニングフレア!」
 詠唱と共に出現した炎はうねりながらガロへ向かった。
「炎魔法か…」
 ガロは自分に襲いかかろうとする炎を見つめ、ひらりと余裕で飛び退く。しかし、それはルインにとって予定範囲内の行動だった。
「何っ!?」
 飛び退いた場所に着地した途端、ガロは顔色を変えた。見ると両足が凍てつく氷に縛られている。行動を先読みしたルインは、炎魔法を放ったと同時に次の魔法を張っていた。
 身動きが取れなくなったガロにルインは杖を向ける。
「清らかなる白き聖獣よ、汝の咆哮と汚れない一角をここに現せ、ヴァースグリッシュ!」
 ルインの周囲に光が昇り、それは白いユニコーンの姿を象った。咆哮したユニコーンは姿勢を低くして、前足で何度か地面を蹴る。
 研ぎ澄んだ一角が狙いを定めたところでルインは魔力を解放させた。
「己の力を我に示し、制裁を与えよ!!」
 言葉を鍵にユニコーンは一直線に駆け出す。
 ガロは足元の氷を溶かそうと炎を呼び出していたが間に合わない。悪魔は向かってくる聖獣へ視線を向ける。焦りの表情を浮かべたように見えた。
 ── が、すぐに何か思い付いたらしく、その顔はころりと勝ち誇った笑みに変わった。
「フフ…本番はこれからさ」
「…!?」
 ガロの周りに突然黒い霧が煙のように立ち昇る。霧はたちまち辺りに広がって視界を遮ってしまった。直進していたユニコーンは霧に飲まれると徐々に光を失い、その姿を消す。どうやら闇の魔力で相殺されてしまったらしい。
 ルインは、ガロの気配も消えていることに気が付いた。
 ── 霧に姿を隠したのか。
 慎重に辺りを見回しながら、杖で軽く地面を叩く。一瞬だけルインの足下に魔法陣が浮かび上がり、それはすぐに消えた。
 その間に、黒い霧は全てを包み込むかのよう、広がるばかりだ。
『気を付けて。私もどこから攻撃が来るのかわかりません』
 妃砂の忠告に「護りはできる範囲で構わない」と言葉を返し、ルインは黒霧に飲まれぬよう警戒した。
 ── 霧の奥から不意をつくつもりか?そうはさせない!
「静かなる風よ、我が声に応え風月の力をここに示せ」
 ルインの詠唱は、周りの空気を集めて静かな気流を作りだした。それはやがて床の埃を舞い上げて、巨大な竜巻と化す。
「霧を滅せよ、ハイウインド!」
 魔法を叫ぶと竜巻はごうっと地均しを伴って霧に向かった。その勢いはあらゆるものを巻き込んで更なる威力を増す。黒い霧は強い豪風に吸い寄せられ、流れるままに吸収されていった。
 霧は徐々に消えていき、視界が開ける。
 その直後のこと。
 ひゅんっ
「…!?」
 空気を裂くような音がルインの頬を掠めて通り過ぎる。それはしっかりと線を刻み、赤い血が伝った。
 ルインは頬を拭いながら、音が聞こえた先を睨み付ける。
「普段は使わないんだけど、たまにこういう戦い方も面白そうだ」
 いつの間にか宙を飛んでいたガロと視線がかち合う。彼はニヤリと顔を歪ませ、広げた両腕を大きく前方へと仰いだ。
 二つの風刃がルインに向かって放たれていた。
 咄嗟に地面を蹴り攻撃を回避するが、交差して通り過ぎた風刃は、そのまま大きな弧を描いて、再度襲いかかってくる。ガロの魔力操作によって狙いが定められているようだ。
 ルインは風の軌道を追いながら、冷静に言葉を紡いだ。
「天を遍く閃光を司りしもの、雷神の力を以て我の前に見えよ」
 前方にバチバチと音を立てて現れた雷。それは紫電を纏いながら風刃を捕らえる。
 力の摩擦で激しい閃光が周囲に飛び散った。
「また魔法で相殺しようってわけ?でも、そう簡単にはさせないよっ!」
 ガロは翼をバサリと広げ、真っ直ぐルインのもとへ向かった。背後から迫る風刃と対峙しているために、彼女の背中は無防備だった。ガロは爪を伸ばし、照準を合わせる。
 だが、ルインは振り向きもせず更に詠唱を続けた。
「風を糧に天を制する龍と為せ、ライトニングファング!」
 言葉の通り、雷は風刃を取り込むと突如巨大な雷龍の姿に変貌した。螺旋状に体を巻き、金色の瞳が睨み付けたのは主の背後から迫りくる悪魔の姿。
 雷龍はルインの頭上を飛び越えて、巨大な口を開いた。
「何っ…!?」
 予想外の魔法攻撃にガロは慌てて方向転換しようとする。しかし、勢いがあるために急には止まれない。咄嗟に両手を広げて障壁を目の前に具現化させた。
「っ…!!」
 バリバリバリ──!!
 牙を向けた雷龍は、障壁もろともガロに喰らいついた。

 ドォンッ!!!!

 悪魔を捕らえた雷龍が凄まじい勢いのまま壁へ激突し、その姿を消す。
 まともに攻撃を受けたガロは、壁にめり込むようにして全身を打ち付けられていた。周りには雷龍の威力を物語るように、バチバチと紫電が残されている。
 見る限り、すぐには行動できない状態。
 様子を確認したルインは、これが機とばかりに魔力を集中させた。
 ── 終わらせる!
 しかし。
「がはっ…!……まさか、魔法を取り込んで返してくるとはね……」
「!!」
 ガロはすぐに起きあがった。その衝動で壊れた壁の細かな破片がパラパラと落ちる。先程の魔法で全身にダメージが入ったようだが、その表情はまだ死んでいない。
「さすがの僕も…今のは大分効いたみたいだ」
 顔を歪ませたものの不敵に笑みを浮かべた。ガロはある一点だけを見つめると、立ち上がる。汚れを払うように翼を広げ、企むような表情で歩み寄った。
 ルインは警戒して思わず一歩下がるが、同時にガロも足を止め、真紅の瞳を細めた。
「君のこと、ようやく思い出せそうだよ。お楽しみの時間の始まりだ」
 そう言うとガロは翼をさらに大きく広げ、そのまま自分自身を包み込んでしまった。周りには黒い霧 ── 闇の魔力が立ち上り、みるみるうちに黒い塊と化す。不気味な黒霧を纏うそれは、まるで巨大な生物の蛹のようだ。
 ただ身を護っているだけなのか。いや、違う。好戦的な性格のガロが受け身を取るような戦いはしないはず。新たな戦法準備なのか。
 迂闊に手を出せないルインは慎重に次の一手を探る。

 しばらくすると霧が消え始め、黒い翼がゆらりと動いた。
 ルインは自分の眼を疑った。
「何……」
 悪魔の翼が砂のように消えてゆく。中から現れたのは悪魔ではない。

「ルイン、逢いたかったよ」
「!?」

 聞き覚えのある声に寒気が走った。自分は今、夢でも見ているのか。
 ルインは四天王ガロと戦っている最中だった。その証拠に、『ルイン急にどうしたんです?攻撃に備えて…』という妃砂の焦るような声が聞こえた。
 精霊には見えていない? これは夢ではない、現実なのか?
 これが、現実だとするのなら ── 残酷すぎやしないか。

 ルインの瞳に映っているのは、戦っているはずの悪魔ではなかった。
 癖のある蒼い髪。
 深く蒼い瞳。
 見覚えのある服装に身を包む、人間だった。

「…レイエ、どうして」

 思わず零れ出たのは、かつて時間を共にした青年の名前。



 蒼い髪、蒼い瞳。
 それは空の色なのか、海の色なのか。蒼というその色がひどく懐かしい。
 年齢故なのか、少々幼さの残る顔立ちは、それでも凛々しく、整った形を表す。
 身体の線は細く、一見すると華奢だ。
 けれど、見かけによらず剣の腕は相当な実力者。
 前向き思考で、よく助けてもらっていたことを思い出す。
 いつも自分の先を歩き、振り返っては無邪気な笑顔を見せていた。



 記憶が現実へ呼び起されたように、彼の姿が今……目の前にいる。
 懐かしい顔で、自分を見つめ返している。



 あり得ない光景に、ルインは動揺を隠せずにいた。
 なぜなら彼は、この世にいないからだ。対峙しているはずの悪魔に殺された。
 それなのに、どこからどう見ても、自分の記憶と違いのない姿で目の前に立っていた。
 生前と変わらない笑みを浮かべて、青年はルインに呼び掛けてきた。
「ルイン、こっちにおいで」
「馬鹿な……レイエは6年前に死んでいる」
「死んだ?俺が? でも、今ここにいるじゃないか。戻ったんだ。約束しただろ、俺はお前を守るって」
 確かに青年はいつもルインを守ってくれていた。敵がいたなら剣士として先陣を切り、魔導士の魔法を取り繋ぐために時間を稼ぐ。詠唱の最中、敵の刃が迫った時はすぐに駆けつけてくれて、安全を確保してくれた。今思うと、姫に寄り添う騎士のような存在。
 ある時、真剣な眼差しで言われたことがあった。

 ── 俺は、ずっとお前のそばにいたい。守りたいんだ。

 戸惑いながらも胸が高鳴り、温かい気持ちを抱いたことを思い出す。
「本当に、レイエなのか…?」
 ルインの頭の中は混乱した。思考がぐちゃぐちゃになる。
 今、自分は何をしようとしていたのか、分からなくなってきた。

 力が抜けたように、ルインはふらりと歩き出した。向かう先は懐かしいパートナーの元。
 辿り着こうとする矢先、一瞬だけ強い何かを感じて足が止まった。
「ルイン、おいでよ」
「…うん」
 再び歩き出したルインは青年の側に行く。彼はにんまりと笑顔を見せると、両手を広げてルインを迎えようとした。
 しかしその時、突然黒い触手が周囲に現れ、抱き寄せられようとするルインを貫こうと襲いかかる。
 バシンッ…!
 取り囲んだ魔手。それは何か見えない力によってはじかれ、掻き消された。ルインが足元へ目を向けると、役目を終えた魔法陣が僅かに発光して消えていくのが見えた。自分が足止め用にと仕掛けておいたものだった。
「大丈夫か?」
 青年が心配そうに手を伸ばす。ルインは差し出された手を見つめ、誘われるまま自分の手を出そうとするが……ハッとなって手を引いた。
「どうしたの?」
 懐かしい声。けれど、紫の瞳は蒼い瞳をキッと睨みつけたまま、彼から身を離す。
 青年は首を傾げていたが、ルインの表情が強張っていることを知り、ついに口端を歪めた。
 はじめは小さく肩を震わせる。くつくつと殺しきれない声が零れ、それは次第に盛大な笑い声を辺りに響かせていた。そして、薄い笑みでルインを見る。
 彼であるが、彼ではない表情。誰かを嘲笑う彼の姿は記憶にない。ルインの背筋がぞっとした。
「アハハハっ!面白いね、すぐに気付いたことは褒めてあげるよ。どうだい?久々に出逢った思い出の人との再会はさぁ」
 口調は悪魔のものだった。偽りを演じていたのだ。
「レイエは死んだ…貴様の手で殺されたんだ!よくも私に、幻を…!!」
 ルインは自覚した。悪魔によって幻覚を強いられていたことを。だから先ほどの一瞬、妃砂の呼び声が届いたのだろう。
 だが、目の前の悪魔は青年の姿のまま変わっていなかった。幻覚を解いているなら悪魔の姿に戻るはずだ。この違和感はいったい。

 その答えは、青年の姿を借りた悪魔によって明らかとなる。
「幻なんかじゃないさ。自覚した今の君にもわかるだろ?これは、君の記憶そのもの」
「私の、記憶だと…?」
「記憶昏睡(メモリートランス)といってね、僕の特殊能力さ。君のような他人の記憶を読み取ることで、本人が強く想う対象を、例えるのなら人の姿・声・仕草、上手くいけば知っている能力まで完全に復元することが出来るんだ、僕自身にね。だから ──」
 青年の姿だったガロは再び黒霧と共に己の翼を出現させて、全身を覆う。
 次に現した姿は、黒い髪に紫の瞳、ルインの顔つきに良く似た男。
「!?」
「君の兄にだってなれる。どう?驚いた?…面白いのはこれからだよ!」
 魔力で剣を具現化させたガロはルインに剣刃を振り下げる。咄嗟に杖で受け止めるが、力の差は歴然としていて重い刃がルインの全身にずっしりとのし掛かる。
「くっ…!」
「さぁどうするの?相手が身内となれば戦いにくいかな?」
「貴様っ…」
 ルインは渾身の力を込めて剣を押し返そうとするが、力負けしてしまい、後方へ飛ばされて倒れてしまった。
 ガロはすかさず追ってくると剣を突きつけ、兄と同じ笑顔を浮かべて呟いた。
「人間はみんな同じだ。例え偽物だとわかっていても、相手が大切な人の姿というだけで攻撃を躊躇してしまう」
「……」
「思い出したよ。君の兄と、あの剣士のこと。知ってるかい?彼らに迷いを生じさせたのは誰なのか」
 紫の瞳が細められ、同じ色の瞳を持つ魔導士を見つめる。

 ── 君だよ、ルイン。

「二人とも、君のことを誰よりも大切に想っていたのさ。だから僕に留めをさせなかった」
「そんな…」
「人間の心は弱い。それさえなければ僕に勝てたかもしれないのにね……本当に愚かだよ」
「二人を……兄さんとレイエを侮辱するなっ!」
 高ぶった感情を抑えきれずカッとなったルインは向けられた剣を払い避け、ガロへ反撃しようと試みた。けれど今、自分の瞳に映る相手の顔は、憎き悪魔の顔ではない。幼いときから憧れていた、兄だった。怒りとと共に振り上げたはずの杖は、すぐに振り下ろすことが出来ない。
 目の前のまやかしの兄は、微笑んだ。
「ルインは優しい子だね」
 昔に聞き覚えのある言葉。ルインは頭の中が真っ白になる。
 悪魔が化ける偽物だと知っているのに、それは本当に生き写しのようだった。もしかしたら蘇ったのかもしれない、そんなことさえ思い込んでしまうほどに。
 だが、現実は希望と異なる。

 ゴッ

「君も、僕には勝てないよ」
 夢を見たのも束の間。兄の表情は一変、冷淡なものに変わり、隙を見せたルインの腹部に強烈な一撃を与えていた。
「ぐっ!がはっ、ごほっ」
 予期しない攻撃。刹那、妃砂が張ったであろう護陣で急所は免れていた。しかしルインは腹を抱えながら片膝をつく。
 ガロは噎せているルインに歩み寄ると、前髪を掴んで無理矢理顔を上げさせる。
「はは!どうだい?自分の兄に痛めつけられる感想は」
「う、く…貴様は……そうやって、兄さんと…レイエを騙したのか」
「卑怯だって言いたいの?おかしい話だよね、彼らだってこれが偽の姿だと知っていたのに」
「……」
 痛みが酷くて思うように声が出ない。それでも怒りだけはおさまらず、底知れない悔しさが溢れ出す。一瞬だけ駄目なのかもしれない、そんなことを考えてしまった。
 けれど、ルインはすぐに低迷思考を打ち消した。
 今まで重ねてきた努力。長い時を経て身につけた力、知識、術。
 それらはすべて、悪魔という敵を倒すため……魔王を倒すため…………今、目の前の仇を倒すために。
 自分が培ってきた時間を、ここで失うわけにはいかなかった。
 魔界へ来る前の、「必ず魔王を倒す」という約束。決して破るためのものではない。無様に殺されるためでもない。絶対に。
 ── 諦めない。あいつは倒さないと!
 どこかに反撃の機会はないのか。ルインは思考を巡らせた。そういえば妃砂の声が聞こえない。気配は感じられるから側にはいるはずだ。いつからだ? 自分がガロの能力に取り込まれてからか…。
 ルインは苦痛を感じながら視線を流す。すでに勝利を確信しているのか、偽りの兄はひたすら笑みを浮かべていた。
 紫の瞳は、その顔をキッと睨む。
「まだ諦めていないの?君はここで終わりだ。終わらせてあげるよ。最後は ──」
 ガロはくすくすと笑い声を零しながら黒い翼を広げた。兄の姿は再び蒼髪の青年へ、レイエに変わる。
「君が最も強い想いを残す、この彼の手でね」
 嘲笑を浮かべるガロはルインが身に付けている鞘から剣を引き抜いた。レイエの風星剣だった。その切っ先がルインの喉元へ向けられて、研ぎ澄まされた刃が闇色に反射する。
 ルインは思わず息を呑んだ。悪魔によって見せられる、矛盾した哀しい現実。
 目の前にある懐かしい蒼い瞳は、すっと細められ、言葉を告げた。

「さよなら、ルイン」

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