水を司りし ウンディーネ

したたかな水の音。
抵抗することもなく流れるままに道を行く。
自然と同化して、それはやがて果てしない世界へと。

最初に見たのは元いた自分達の森の風景。
緑が生い茂った木々の間を動物たちが駆けてゆく。
たわいもない、いつもの景色だった。

次に見たのは名もない草原の風景。
いつも真上にしかなかった青い空。
その広大さ、どこまでも続いている景色を初めて知った瞬間だった。

3つめに見たのは人が住まう小さな村の風景。
小川を利用して彼らは洗濯・料理などをして生活する。
汚れるのは嫌だけど、日々恩恵に感謝する人を見るとなんだか嬉しくなった。

4つめに見たのは同じく人が住まう街の風景。
移り変わる景色はどこもかしこも固いコンクリートで作られている。
河川を覗く人々がときどきごみを投げたりして、少し悲しくなった。

5つめに見たのは人の手で作られた浄水施設の風景。
人によって汚れたものを人によって洗浄する場所。
正直あんまり綺麗になった気がしないけど、彼らにとっては満足なのかもしれない。

最後に見たのは広い海の風景。
波間を漂うと水中では魚たちが、空では鳥たちが精一杯に生きていた。
ここに来てようやく生きる意味の存在価値を理解出来た気がした。



もうすぐ旅は終わる。
けれど本当の終わりじゃない。
ここからもう一つ新しい風景を見た。
空から眺める世界だ。
とても素晴らしい景色に十分すぎるくらいの感動を覚えた。
これを見るために今までの道があったのだろうか…そんなことを思う。



そして辿り着いた終点。
雨となって降り落ちた場所はいつもの森の中だった。

「おかえりなさい、世界を巡る旅はどうでした?」
「――」
「そうですか、いろいろな事が学べたのですね」
「――」
「大丈夫、世界には貴方の知らないことがまだたくさんあるのですから」
「――」
「信じましょう、これからの未来を…」



水は再び流れ落ちた。
「いってらっしゃい、帰ってきたらまたお話聞かせてくださいね」
彼女に応えるため、次なる新しい旅路へ向けて…。