氷を司りし ヒューア

天からの贈り物。

白い舞台に降り立った冬の使者達。
四角形、六角形、三角形…形は様々な十人十色。
どれも同じようにしか見えないけれど、一つの出逢いは二度とない素敵なもの。
でも、人は無我夢中にあちこちを駆け回る。
出逢った瞬間、その儚い夢が終わっていることにも気付かずに。

銀世界を制する冬の使者達。
ふわふわと舞い降りるその姿は白い天使のようで。
それでも人は恐れている。
風に乗って訪れる冷たい息吹。
天使が悪魔になる瞬間、それは極寒へと続く誘い道。

僕には手に取るように分かる。
僕も冬の使者達も、今しかない時間を楽しんでいるんだ。
舞い降りて、風に流されて、旋回しては舞い上がって。
何度も繰り返される輪廻の軌跡。
ときには間違って、人々に迷惑を掛けたりもするけれど。
この時間だけは僕らのもの、誰にも邪魔なんてされたくない。

けれど人の手に触れたとき、冬の使者達は瞬く間に消えてしまう。
それがほんの一部だとしても、どれも世界に一つしかない大切な結晶。
「ああ、消えちゃった」
そんな言葉でまとめられてしまうけど、僕は忘れない。
彼らと過ごした時間は心に残る思い出だから。

「ありがとう」と「さようなら」。
今年も素敵な冬の使者達の訪れを祈りつづけよう。
僕はいつまでもここにいるから。