Story 史暦物語

無の空間 -FieldZero-

 遠い、遠い彼方の向こう側。
 いつ、誰が、この場所に名前を付けたのだろう?

 ただ、知らない者は知らないままで良い。
 誰一人として知る必要はないのだから。

 ただ、知っている者は知っている。
 ここは何も無い場所で ―― だからこそ存在するものがあることを。



 それが、

 『無の空間』―― フィールド・ゼロ

神 -創造神ユイティラーゼ-

 人々が想う神の存在はひとつ。
 彼らを生みだした創造神 ―― その名はユイティラーゼ。
 創造神ユイティラーゼは、何も存在しなかった世界に精霊という恩恵を与えることで広大な大地・海・空を創り上げ、数多の生命を築き上げた。
 神の存在を見えた者はいない。
 だが、人々は神の存在を想像上で想い描いた。

 母なる大地を築き、
 今も尚、
 空の彼方で、
 すべてを見守っているであろう神。

 それは美しい女性像として、後世に伝えられていた。

 無の空間と呼ばれる場所に、星はあった。
 光煌めく星、闇に沈む星、軌道を辿る星など、幾千にも及ぶそれらはただ「星」として存在した。
 その中に時折、他を凌ぎ一段と輝く星がある。
 創造神によって命を与えられた星だった。
 物質として空間に散らばる星は、創造神の差し手によって初めて世界を創り上げるという。そうして誕生した生命の息吹は、強い光の煌めきで表された。

精霊 -MANA Force-

 星に命を与えるため、神が最初に創り出したのはすべての基盤となる精霊である。
 彼らは神の意志に従う。星に必要な原子を構成し、生命を誕生させ、世界を継続させるという。
 精霊にはいくつかの種類があった。
 全ての精霊を統括するのは、源を司るオリジン。彼を中心軸として、すべての精霊は幾重にも世界を構成させ、星の守護者となる。
 人々から精霊は「フォース」という呼び名で慕われ、その存在は神の恩恵として崇められた。

世界

 世界とは、星に誕生した生命の住処 ―― 精霊によって構成された環境が存在する場所の総称。
 しかし、時が流れた現在では、世界という言葉に含まれる意味は少し異なるものとなった。わかりやすく一般的な表現をすると、人が住む場所を示す。
 これは人が誕生した後に、彼らが人社会を形成させた時に総称した表現だと云われている。

天界 -プラディーン-

 星の中で誕生した世界。しかし、空間の違いで異なる世界が他に存在していた。
 その一つが、天界プラディーン。天使達が暮らす場所だった。
 天使は、その背中に白い翼を持ち、容姿は人と似ているが皆金髪碧眼で統一されている人種族である。
 光の精霊の加護を受ける彼らは、光の潜在属性とその魔力を持つ。そのため、魔界オルセイアの悪魔とは対立関係にあった。

魔界 -オルセイア-

 天界と同じく、異世界に地盤を広げた場所・魔界オルセイア。悪魔達が暮らす場所だった。
 悪魔は、すべてにおいて天使の逆位置にある。背中には黒い翼、容姿は皆、青白い肌に先の尖った耳、血に染められたような真紅の瞳、手足の爪は鋭い刃物に変化させることが出来る特徴を持つ。
 闇の精霊の加護を受ける彼らの潜在属性・魔力は闇である。

天魔大戦

 世界に人が誕生する前のことである。
 異世界で先に独自社会を築いていた天界と魔界は、互いの異なる容姿・思想から争うようになった。
 これが、天魔大戦の始まりである。
 天界を主導する者は天王、魔界を主導する者は魔王。彼らは壮絶な戦いを繰り広げ、ありとあらゆる力を衝突させたという。
 だが、彼らの存在はすべて逆位置。光に対するは闇、闇に対するは光。光は闇に勝り、闇は光に勝る。
 堂々巡りの関係性は、完全なる決着が付くことを良しとはしなかった。
 結局、天魔大戦は冷戦を以て、無期限の停戦に持ち越されたという。

 「人」という言葉は、人型の生命を総称した呼び名である。となると天界の天使、あるいは魔界の悪魔もその中に含まれるだろう。
 世界では、主に人間を表す言葉になる。その理由は、世界に存在する人の割合で人間が大半を占めているためである。
 人間以外の人としてはエルフ族、吸血種、獣人種など、他にも知られざる種族が世界に存在しているが、そのどれもが稀少数であると云われている。

世界社会の形成と発展 -ヴァーツィア-

 天界と魔界が対立する中、世界では天使や悪魔と類為す人……主に人間が刻々と活動を広げていた。
 当初、世界に暮らす人は自然の理に従うまま時を過ごす。やがて、彼らの知能は様々な知識・技術を身に付けるようになり、大きな発展を迎えた。
 その結果、彼らは独自の国家社会を創り上げ、世界を代表すべく主導権を握ったのだという。そうした繁栄を築いた世界は、初代統一国家の名称から「ヴァーツィア」と呼ばれるようになった。

隠れた者 -Light and Dark-

 天界と魔界の存在が伝承としてしか知らない時代。
 世界の人々は精霊の力を借りて万物を操る術・魔法を知り、自分達にそれらを行使出来る可能性、魔力があることを理解した。
 手探りで魔法の神髄を追求する中、秘かに特化された人種族がいることは誰一人として気付くことはない。この先も、謎でさえ明るみに出ることはないのだろう。

 ―― しかし、ここではあえて書き記すことにしよう。

 特化されたのはいずれも人間で、それは二つの人種族に分かたれた。
 一つは光の翼と魔力を持つ者たち、彼らは自らを「光主」と呼んだ。
 一つは闇の翼と魔力を持つ者たち、彼らは自らを「闇宵」と呼んだ。
 光主と闇宵、共に誕生の経緯は定かではないが、一理、彼らの中では天界の天使と魔界の悪魔に因果すると伝えられる。
 そのせいだったのか、彼らも互いを敵と認識した。周囲の目に触れぬよう特化能力を封じていながら、両者の存在感だけは消すことが出来ない事実。
 光主と闇宵は衝突し続けたまま、時は流れる。

 これでは天魔大戦の二の舞…… ―― だが、同じ結果を生み出すことはなかった。

 争いの最中、僅かに芽生えた理解。葛藤が疑問に変わり、怒りは優しさへ。
 最後に零れ落ちた涙は、互いを消滅へ導く理解の証だった。
 だから、彼らが残した足跡を見つけても真相まで辿り着く者はいない。

 この先もずっと、
 永久に隠れた者として。

竜 -Dragon-

 世界に人の国家社会が成り立った頃、俄に信じられない存在があった。
 それが竜である。
 突如として現れた巨大な存在は、人々に恐怖を植え付けるには十分過ぎた。
 とはいえ、竜は人を害そうとしたわけではない。そんな思考は無論、邪悪に満ちた心は微塵として持ってはいない。ただ、人という存在に興味を示し、姿を見せただけであったという。
 しかし、膨れ上がった人々の恐怖が潰えることはなかった。
 巨大な存在は先の未来を脅かすものだろう。そう結論付けた彼らは、竜の討伐を決行した。
 竜は、人より遥か強大な力を秘めていた。一斉に攻撃を仕掛ける人の刃など恐れるものではない。恐れるものではないのだが…… ―― 竜は、人に対して一切手出しはしなかった。
 やがて数多の傷を受けた竜は、彼らから逃れるために飛び去る。だが受けた傷が想像以上に酷く、いくら堅固な身体を持つ竜であってもその灯火は消えようとしていた。
 そんな時、竜の元に現れたのは一人の人間だった。
 煌めく銀髪に、大海を思わせる蒼い瞳を持つ青年。
 彼との出逢いが、世界に新たなる種を生み出すきっかけになった。

侵攻と恐慌 -開戦-

 ヴァーツィア暦創世後のこと。詳しい年代は記されていないが、平和な世界に黒い闇が襲いかかった時代がある。
 空から押し寄せてきたのは悪魔の軍勢。事実上、魔界による世界侵攻が始まったのだ。
 魔界の統率者・魔王の目的は明らかにされていない。彼らの狙いは世界の土地か、恩恵に溢れた精霊の力か、それとも単に人を嗜虐するため、圧倒的な優越感に浸るためだったのだろうか。
 何にせよ、魔界は世界に攻撃を仕掛け、残虐な破壊活動を行ったことには変わりない。
 突如行使された宣戦布告に、当時の人々は混迷するばかりであった。しかし、このまま侵略行為を黙って認めるわけにはいかない。
 世界の人々は、彼らから世界を守るために戦うことを決意した。

 世界ヴァーツィア vs 魔界オルセイア

 永きに渡る戦争は、ここから始まったのだ。

最初の英雄 -魔導士ルイン-

 戦火の絶えない時代は続く。ときはヴァーツィア暦1711年。
 世界と魔界の争いは止まることを知らず、延々と決着が付くことはなかった。
 定着されつつある時代の流れ。
 それを覆したのが、世界最初の英雄・魔導士ルインである。
 ルインは人間でありながら、エルフ族を凌ぐ強い魔力を生まれながらに持っていたという。それは人々からは「神が与えた至福」と称されていた。
 魔導士としての実力は瞬く間に開花し、ルインは世界を代表する中心地・エンデバーグ王国で様々な功績を残している。
 戦場に赴くルインの姿はこう記されていた。

    *

 血と刃で微睡む大地、赤と黒が混ざり合った風景。
 聞こえるのは地獄への誘いか、残されるのは次々と枯れゆく灯火。
 その中に、凛として佇む者はいた。

 黒百合のような紫黒の髪が揺れる。
 白面から覗く紫の瞳は、ぎらりと閃き闇を射抜く。
 魔力は光の帯となり、まるで身体の一部であるように、自由自在に力を織り為す。

 殺傷の刃はあらゆる敵を切り刻んだ。
 殲滅の炎はあらゆる敵を焼き尽くした。
 怒濤の雷はあらゆる敵を貫き、葬った。

 如何なる敵も、その魔導士の前では微塵の灰と化す。
 如何なる者も、その魔導士の隣りに並ぶことは出来ない。

 「神が与えた至福」は確かに存在し、
 それは、世界に平和をもたらした。

    *

 多くの涙を救うために、ルインはたった一人で魔界に向かったとされている。
 しかし、真の動機は未だ謎のベールに包まれたままだ。いったいどんな英雄であったのか、ルインという人物像は今ひとつ解明には至っていない。

 ただ、

 魔導士ルインは魔王を倒し、平和を取り戻した。
 そして、人々からは英雄として掲げられた ――。

 これが残る史暦、最初の英雄である。

暗黒の再来

 魔導士ルインが魔王を倒してから僅か2年後のこと。
 多くの人々にとって、信じたくない事が起こった。
 暗黒の再来 ―― それは魔王の復活を意味する。
 魔王が蘇ったという確かな事実はなかった。だが、世界各地では原因不明の黒い霧が発生し、霧に呑まれた魔物は凶暴性を増したという。人に至っては邪悪な力に精神が蝕まれ、大きな国が陥落してしまうという事態にまで発展していた。
 再び混迷に陥った世界は不安と恐怖に駆られる。この時、唯一の希望であり頼みの綱でもあった英雄 ―― ルインは行方不明だった。
 底知れぬ絶望は刻々と煽られ、霧は無情にも魔の手を広げるばかり。
 人々は、次代を担う新たな英雄の登場を願うほかなかった。

王女と騎士

 暗黒の再来により荒れ始める世界。哀しみは全土に渡って染み込んでゆく。
 不運にも陥落させられたのは、アラムハイン王国。どこよりも魔法研究の進んだ国であった。陥落に至った原因は黒い霧であり、それは瞬く間に国を覆い炎上させたという。
 そんな崩壊に沈む中、ただ一人だけ命を長らえた者が存在した。
 エリス・ルターナ・スカーレット ―― アラムハイン王国の王女であり、人々が待ち望んでいた英雄の一人となる人物だ。

 この日、エリスは誕生日を迎える壮大なパーティーの最中であったという。
 虚しくも炎に潰される城。悲鳴と恐怖にすべてが緋色に塗りつぶされる。それは隠し通路を辿っても逃れようのない勢いだった。
 命尽きようとする王女を救い出したのは、城に居合わせた他国の若い騎士である。
 クラウド・ラグラム ―― その風貌は金髪に碧眼を兼ね備えた美しい青年で、貴族のように凛とした雰囲気を漂わせていたという。
 彼は黒い霧が出現し始めた当初から、その原因を突き止めるために自らの意志で真相と解決策を探していた。たった一人で、自責を追うように道を求め続け、今も尚進行する現状に苦渋を覚えている。
 そうまでして彼が世界を救おうとする理由は、背中に大きな誇りを持っていたからだった。

 運良くして助けられた王女エリス。
 けれど、彼女に残されたものは自分というたった一つの命と、絶望だけだった。
 身を以て受けた悲劇。
 失われた祖国。
 哀しみに嘆く現在も、同じような境遇に遭う者は数多くいるのだろう。
 生まれた時から甘やかされて育った彼女にとって、この先の未来は閉ざされたに等しい。

 だが、彼女は自分の足で歩き始めた。

 自分の置かれている状況を理解し、自分が為すべきことを見出したのだ。それはクラウドによって導かれた希望でもあった。
 かくしてエリスは、霧の正体解明と打開策を求めるため、クラウドと共に旅することを決意した。

 そして長い旅の末、彼らは霧の正体とその発生源を突き止めるまでに至った。
 闇を滅する眩い光は、世界を魔の手から救ったという。

 最初の英雄に継ぐ、新たな英雄が世界に誕生したのだ。

大陸移動

 英雄の活躍によって世界は平和な時を過ごす。
 そしてある時、大きく動くべき時を迎えることになった。
 大陸移動に伴う、陸地の再形成である。
 ここに至った原因や経緯はわかっていない。人々の見解では、何か巨大な災害が発生して陸地が動いたという説が強い。
 世界ヴァーツィアでは、エンデバーグ王国を中心とした中央大陸のほか、雪原の続く北方地帯、砂丘の続く熱帯地帯、まだあまり開拓が加えられていない北東・北西大陸などといった区分で形成されていた。
 これらは大陸移動によって新たな世界地形を生み出し、今まで築き上げられていた社会的文明も変化を遂げることになった。

新たなる暦 -ドラングレイト-

 大陸移動により世界ヴァーツィアの基盤は崩れてしまう。移動直後は人々の混乱も激しく、ほとんどの国は陸地の分裂などで事実上崩壊の一途を辿ることになった。
 それでも、大きな困難を乗り越えた人々は世界の再出発を願い、新たな暦を創り上げることにしたという。
 新たな世界は「ドラングレイト」と名付けられた。
 新生世界ドラングレイトでは、かつての史暦を残したいという人々の意思から、ヴァーツィア時代の功績を様々な形で引き継ぐことになる。
 その一つとして、季節を表す言葉には英雄の名前が使われたという。

太陽と月

 時代は繰り返されるのだろうか?

 世界ドラングレイト創世後のこと、一部の人間に再び魔力の特化現象が起こった。
 強い光の魔力を持つ者 ―― 陽読(ひよみ)
 強い闇の魔力を持つ者 ―― 月読(つきよみ)
 新たな人種族の誕生である。
 彼らが誕生するに至った経緯は、やはりわかってはいない。
 ただ、いつの時も「光」と「闇」は切っても離せない存在だった。
 世界を抱える「星」にとって、無くてはならない重要なものなのだ。

堕ちた星

 新たな人種族、陽読と月読。
 強い魔力を持っている彼らだが、その本質はもともと人間と同じものだった。
 わかりやすく比べるならば、光主と闇宵が良い例となるだろう。相反する力を持つ故に対立と衝突を重ねた者たち。
 けれど、陽読と月読は彼らのような確執を抱くことはなかった。対立するどころか共に生活をするほど仲が良かったという。
 その結果、陽読と月読の間に子供が生まれた。

 陽読と月読の理解の証として。
 光と闇を同時に持つ子として。
 双方の力を受け継ぐ者として。



 ―― 星読(ほしよみ)が誕生したのだ。



 しかし、

 星読の誕生が、陽読と月読の関係を崩壊させることになり、
 さらには、世界全土を揺るがす事態になろうとは……

 誰一人として、考えていなかったことである。

天魔大戦2

 かつて世界進撃を目論んだ魔界の魔王。
 彼が魔導士ルインに倒されてから、数年後のことである。
 魔界、そして対する天界に、それぞれ戦慄の兆しが起ころうとしていた。

 『魔界と天界の共存を』

 この大胆な構想を掲げたのは、前魔王の息子・新生魔王エルガナスである。
 驚いたことに、彼の構想に賛同を挙げたのは、天界の大天使クラインであった。

 永きに渡る対立の末、猶予のない緊迫した時を過ごした両者は、互いを理解し手を取り合うことで戦いを終結させようと考えたのだ。
 だが、すでに定着してしまった相互の認識を簡単に変えることは出来ない。それは彼らの昔から培ってきた本質をねじ曲げることでもある。
 当然のように、二人の思想構想は多くの批判を受けることになった。

禁忌の子

 無謀な構想を説いた魔王エルガナスと大天使クライン。
 敵味方、あらゆる方面から批判の嵐が飛び交うが、彼らは自分達の意思を諦めることはなかった。
 種族が違っていても、きっと分かり合える。
 姿は違っていても、同じ人であるのだから。
 二人はそれを信じて、疑うことはない。

 だから、

 禁忌を犯した。

 自分達の構想、その実現の可能性を示すために……
 魔王エルガナスと大天使クラインは、交わしてはならない血を合わせたのだ。

 そして誕生したのが、

 悪魔と天使の血を受け継いだ者、



 禁忌の子である。



 二人は互いの意思を周りに理解してもらおうと、掟を破り、禁忌を犯した。

 しかし、その既成事実はより一層、互いの種族の確執を深めることになってしまったという。昔から継承された思想を易々と変えることは出来ないのだ。
 魔界と天界は両世界の崩壊を恐れ、エルガナスとクラインを強制的に引き離した。過ちを犯した者をこのまま生かすわけにはいかない。本来であればすぐに処刑されるべきだったが、あらゆる事情が重なってしまい、執行に及ぶことはなかった。
 それは、禁忌の子に対しても同じ。両世界の恥だとして、子供は殺される。
 だが、それを抑制したのは魔王エルガナスだった。
 大天使クラインと交わした思想を諦めきれず、禁忌の子を生かすためにエルガナスは子供を魔界と天界の届かない場所へ ―― 世界に飛ばしたのだ。

 その後は時が満ちるまで、天界と魔界は対立し続けた。

聖域 -レンセアーテ-

 聖域レンセアーテ ―― それは星に存在する世界、魔界、天界のいずれにも属さない新たな場所であった。
 聖域といえば、選ばれた者だけが、純真な心を持つ者だけが入ることを許される……そんなイメージが付き物だ。
 しかし、ここは違う。
 確かに聖なる領域であることは間違いないのだが、この新世界はどんな者でも受け入れるという。過去にどんなに悪事をしてようが関係ない。ここは立ち入る者を選ばない、真の意味で新しい世界なのだ。

 誰もが自由でいられる楽園。

 故に、全ての平等を意味する場所でもあった。

冥界 -バグム・ヤノイ-

 人知れず漂う第4の異世界がある。  冥界王が統治するという冥界の役割は特殊なもので、各界の秩序均衡を護ることだった。

死神

 冥界には「死神」と呼ばれる者たちが存在する。しかし、そのままの意味ではない。
 死神は冥界から他の世界へと渡り、空間にばら撒かれた「邪気」あるいは「負の力」を集める役割があった。彼らの存在は、彼らが許した者だけがその姿を目にすることができる。