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Last Origin - 竜の目覚め - story of dragon blood -

 夜空に広がる幾千もの星。闇に流れる光の一筋は、邪魔するもののない見通しの良い場所であるからこそいくらでも目にすることができた。絶えることの無い夜空の煌めきに少年は金色の瞳を細め、やがて両手を組んで密かに祈りを捧げていた。
 ── どうか、無事に生まれてきますように。
 時は刻々と近付いていた。けれどそれがいつであるのかは、まだ分からない。
 少年の目の前には巨大な大木がどっしりと根を据えていた。樹齢およそ1000年は超えているだろうその木は未だ老樹と表現するには早過ぎて、今も尚逞しい姿を維持している。枝には青々しい緑がいくつも葉を広げ、その中を探れば鳥の塒も見つかるはずだ。これこそ生命に満ち溢れた自然の象徴。
 少年はこの大木が好きだった。ここにいるだけで心は自然と安らぎ、気が付けば寝てしまうこともしばしば。彼にとって癒しを与えてくれる大切な場所なのだ。
 そうして現在、今でも大好きなこの樹木が与えてくれるものは昔からの安らぎと、もうひとつ。彼には楽しみにしていることがある。
 祈りを終えた少年は樹木の根元にあるものを優しい眼差しで見つめた。

 金色の瞳が見ているものは、白い繭に包まれて淡い光を放っている卵だった。



「まだここにいるつもりかい、メア」
 背中から掛けられた声。メアと呼ばれた少年が振り向くと、うっすらと暗闇に浮かびあがる影があった。こちらへ近付いて来た影は卵の光を受けて姿が露わになる。銀色の髪と蒼い瞳を持つ青年だ。
「皇兄、卵の孵る日が近いんだ。もしかしたら今日これからかもしれない……そう思うと、俺はここから離れられないよ」
「確かにね、君がずっと待ち侘びていることは知っている。でも、だからといって1日中飲まず食わずでいるのはどうかと思うよ…?」
 メアが見上げる先にいる青年 ── 皇は怒っているわけではなかった。顔には穏やかな笑みが浮かんでいて、どちらかといえばメアを心配していたのだろう。心配されることはメア自身にも分かっていたことだ。でも今は、どうしてもここにいたい。
 メアはあれこれ理由を探して、皇に言った。
「だって皇兄……俺の時だって、皇兄はここで待っててくれたじゃないか」
「それは……」
 皇は返す言葉を詰まらせてしまう。メアが口にしたのは思いもしない言い訳だったからだ。もっと子供が駄々をこねるような理由を言うと思っていたのに……少々甘く見てしまった。そんな彼の内心を知ってか知らずか、メアは真剣な表情を浮かべて皇を納得させようと言葉を続けた。
「俺が目覚めた時、ここには皇兄がいてくれた。すごく嬉しかったんだ。一人だったら、俺はきっと迷子になって死んでいたかもしれないから……。だから今度は俺が、この子を待つ番なんだよ」
 金色の真っ直ぐな瞳は蒼い瞳を捉えて離さなかった。少年が胸に抱く意志に嘘はなく、あの卵に対する愛情も本物だ。それに、まさか自分が少年の中で大きな存在になっているとは知らず、皇は驚いていた。顔には出さないが驚いた反面嬉しい気持ちもある。そういう想いを持ちながら自分のことを棚上げするわけにはいかない。
 皇は繭の前で座るメアの隣に並び、腰を下ろした。それからようやく口を開く。
「仕方ないな……でも、僕も一緒にここで待つからね」
「皇兄…」
 メアは一瞬瞳を丸くしたものの、その表情はすぐに喜びへと変わっていった。
「うん、ありがとうっ!」
 お互い笑顔で頷くと、二人はひっそりと時を刻んでいる卵を見守った。



 大木の根元に宿る新しい命は日々光を強めていて、瞬きの振動も大きくなっていた。変化が現れるたびにメアは胸を高鳴らせ、皇は静かに見守る。
 しかし、ずっとここにいるばかりじゃいられない。何を言ってもメアはその場を離れようとはしないので、皇は時間を図っては外へ出かけ、彼のために食料を携えて来た。カゴに詰められた出来たてのパンと果物を見る度、メアは瞳を輝かせ美味しそうにそれらを口にした。
「あのさ、いつも思っていたんだけど…」
 パンを頬張りながらメアは不思議そうに皇を見ていた。その視線が何か珍しいものでも見るような眼差しだったので皇は思わず首を傾げる。
「何?」
「このパン……もしかして皇兄が作ってるの?? このためにわざわざ家に帰っているんじゃ…」
「まさか、これを作っているのは僕の姉さんだよ。君のことを話したらすごくはりきっちゃって、毎日作ってくれるんだ」
「へぇー…そういえば、皇兄のお姉さんにまだ会ったことはないな。今度逢わせてくれる? お礼を言いたいんだ」
「そうだね、姉さんもメアに逢いたがっていたからきっと喜ぶよ」
「そうだ! この子が無事に生まれたらさ、一緒に皇兄の家へ遊びに行ってもいい?」
「もちろんだよ。早く生まれてくるといいね」
 皇とメアは依然として静かに鼓動を波打つ卵を見やる。近い未来のことを話すのがとても楽しくて、メアの顔にはいつも笑みが消えることはない。
 ── もうすぐ、きっともうすぐなんだ。早くこの子に逢いたいなぁ…。
 時は刻々と進む。あとは待ち続けるだけで良い。



 メアが卵に出逢ったのは遥か昔のことだった。確か200年ほど前になる。
 ある日メアが大好きな樹木を訪れると、その根元には忽然と白い繭に包まれた卵が作られていたのだ。前日には何も無かったはずなのに。最初は「なんでこんなものが突然現れたんだ?」と疑問だったのだが、彼の直感はすぐに確信していた。これは“自分と同じ仲間”なのだと…。

 さらに昔へ遡る。およそ100年前、合算すると300年前のことだ。メアもここで生まれた一人だった。なぜここで誕生したのかはよくわからない。多分探ってみたところで一生わからないことだろう。だからそのへんはもう気にしない。
 肝心なのは、生まれる時に自分を待っていてくれた人が傍にいたことだった。メアの場合は、兄として慕う皇。あの時のことはいつまでも覚えているし、この先ずっと忘れない。

 ── …?
 ── 良かった……ようやく目覚めたようだね。無事に生まれてきてくれて、ありがとう。
 ── 貴方は俺を、待っていた…の…? ずっと?
 ── うん、一人じゃ寂しいだろうと思ったから……それとも、一人の方が良かったかな?
 ── ううんっ! そんなことない……俺も、誰かに逢いたかったから。
 ── そっか、僕も君を待っていた。こうして出逢えることができて嬉しいよ。

 メアは生まれる前から、生まれた後に広がる世界のことを知っていた。傍に誰かがいることも本当は僅かながらに感じていた。でも、それを確かめられたのは生まれた後だった。生まれてから初めて現実と対面する。瞳を見開いた先に広がる光景の中で、彼 ── 皇と出逢ったのだ。生まれたばかりのメアは幼いながらも強く実感していた。自分以外の生命に出逢い、言葉を交わして、心を分かち合うこと……その中で新たに芽生えた温かい感情。一人だったら分かりえないだろう心の安らぎを、ここで覚えた。
 だから想うのだ。同じ場所で目覚めようとするこの子を、放ってはおけない。心の温かさを知って欲しいと願っていたから。



 そうして、卵の前で過ごし続けて一週間。
 一日でもっとも陽が高く昇った頃、時は満ちた。



 最初に気付いたのは、この時を長年待ち続けていたメアだった。
 強い光を放つ卵の鼓動が大きくなり、いつしか聞き慣れない音が聞こえ始める。
 ピシ……ピシ…パリ…パリ、パリ……
 二人が見守る先で新たな時間が動き始めようとしていた。メアは思わず声を上げる。
「皇兄っ! 卵に、ひびが…!?」
「うん、いよいよだ」
 繭に包まれていた卵の殻に細いひびが入り、それは徐々に大きくなる。やがて穴が開くと、殻の中から広い世界へ対面しようとする生命が手を伸ばしていた。白い産毛に包まれていた手の先には小さな黒い爪が並んでいる。例えるなら小熊の手を思わせる動物のものだ。本能が示すままに片手はバリバリと殻を剥がし始め、30分が経過した頃、ようやく卵の中で眠っていた本体が現れた。
 白銀の毛色が流れていて、背中には小さいながらも翼がある。苦労の末に両手を殻の外へと押し出そうとするその獣は、地面へ向かって倒れそうになった。
「危ない…っ!」
 あの子を助けなきゃ…そう思って身を乗り出そうとしたメアだが、それは皇によって遮られた。
「メア、駄目だよ」
 彼は言葉少なげに、今は自分たちが加わる時ではないことを告げている。その間にも生まれたばかりの子は殻ごと地面へ崩れ落ちてしまった。白い繭が絡まってしまって思うように動けないようだ。翼も未だ弱々しくて広げることすらままならない状態。それでも必死に身体を起こして前へ這い上がろうとしていた。
 メアは大きな不安を抱きながらも、気持ちを切り替えようと奮闘していた。本当は分かっている。思い返せば自分の時もそうだったじゃないか……。

 ── 大丈夫だよ……僕はここにいるから、待っているから。

 メアの脳裏に皇の言葉が木霊する。そうだ、焦ってはいけない。ゆっくり、ゆっくりでいい。ここから立ち上がるのは、あの子自身の意志でやらなければならないことなのだ。
 ── 大丈夫、きっとあの子は大丈夫だよ。俺が信じてあげないと…!
 なんとか不安を心の隅へ追いやって、メアは生きようとする命を見つめた。

 殻から乗り出した小さな身体は銀色に輝いていた。白銀の毛並みはキラキラと星のように光っている。自分のものとはまるで対照的だとメアは思いながら、頑張れっ!と密かに応援の言葉を掛けていた。
 さらに1時間が経過して、地面に伏せていた獣はようやく殻を後にし、繭からも逃れ、改めて身体を起こし始めた。まずは後ろ脚で身体を支える準備をする。少しづつ身体をよじり、前にある両腕で地面を捉える。震えながらもゆっくり力を入れていくと、途中で力が抜けそうになっていた。けれど強い意志があったのかそうはならず、両腕はやがて地面から離れた。獣はちょこんとお座りするような格好になり、落ち着いたところで顔を上げた。
 白い顔から覗くのは、大きな銀色の瞳だ。なんて愛くるしい姿なのだろう。メアがそう思った時、生まれたての獣は初めて言葉を発した。

 ── あなたは、だぁれ…?

 声というよりは、これは彼らの間で使われる思念伝達だ。実際には音としてではなく脳裏に直接声を伝える状態だった。
 銀瞳の見つめる先が自分だとわかったので、メアは一度皇の顔を伺った。この声は彼にも聞こえているはずだ。皇は優しい笑みを浮かべていて小さく頷く。だからメアは、そうっと獣の方へ近寄ることにした。

 ── 俺の名前はメア……メアゼストイーファ。ずっとここで君を待っていたんだ。
 ── メア…? メア…メア、メア…………あなたが、闇竜の…?
 ── うん、俺は闇竜。真名は ―――――――― だ。
 ── そっか、そうだったんだ~!
 ── 君はもしかして…光竜なのか?
 ── そうだよ。私の名前はシャークランリッシュ、真名は ―――――――――― 。
 ── シャークランリッシュ?
 ── うん! でもこのままじゃ長いよね、私もメアみたいに呼ぶと“シャーク”…になるの?

 小さな獣、いや ―― 竜は瞳を光らせて、メアの応えに期待を抱いているようだった。好奇心が強いのだろうか、彼女は物怖じすること無くメアのすぐ目前に押し迫る。そんな白銀竜の様子が可愛くてメアの顔にはずっと笑顔が零れていた。こんなにも無邪気に触れ合うことができるとは思っていなかったので、すごく嬉しいのだ。

 ── ええっと、シャークよりは…シャーリーの方が可愛くていいんじゃないかなぁ。
 ── シャーリー? シャークランリッシュで、シャーリー…? シャーリーかぁ………うん、シャーリーにするっ!
 ── 気に入ってもらえたみたいだね。
 ── えへへ~♪ ところでさ、向こうにいるカッコいい人はだぁれ?

 白銀の小さな竜はひょっこりと首を伸ばし、奥で和やかに見守っている青年を見た。気付いた皇は、白銀竜の傍へ寄ると優しく頭を撫でて挨拶を交わした。

 ── はじめましてシャーリー、僕はキルシス。よろしくね。
 ── キルシス…? …ああもしや!? あ、あなたが噂の、皇さまっ…!?
 ── シャーリーも知っていたんだね、皇兄のこと。
 ── 知らないわけないよ、ずっと前から知っていたもの! それはメアだって同じでしょう…?
 ── …確かに。
 ── あのさ、僕の噂ってそんなに広いものなの? こっちには自覚がないんだけど…。
 ── 噂といっても俺たちの間だけだからね。
 ── うん、でもまさか皇さまに出逢えるなんて…! しかもカッコいいしー!!
 ── シャ、シャーリー…?

 すっかり皇に夢中になっているシャーリーは感情を表すかのように尾をバタバタ振っていた。最初こそ弱々しかった背中の翼も気が付けば生気を取り戻していて、今はしっかりと骨を張っている。
 それを自覚したのだろうか、シャーリーはいくつか言葉を交わした後、不意に彼らから離れてその翼を大きく広げた。対なる翼は銀色に輝いて力強く波打つ。するとシャーリーの身体はふわりと浮きあがり、初めて目にした大空へと飛び立った。
 彼女の空遊を眺めていたメアは身体が疼いて仕方なかった。でも今は陽があるから…。けれど、結局は誘惑に負けてしまう。メアは空を見やってから背中に翼を現出させた。その黒い翼は徐々に大きく広がってメア自身をすっぽりと覆い隠してしまう。少年が起こす変貌に皇はまったくといっていいほど動じることはなかった。彼の様子を何でもないことのように眺めるだけで、やっぱりまだまだ子供だなぁと、そんなことを思っていた。
 再びメアの翼が広がった時、そこにいたのは少年ではなかった。黒い身体に金色の毛並みを持つ、シャーリーよりもふた回り程大きい黒い竜。
 そう、これがメア本来の姿……彼は闇を司る ── 闇竜だ。

 突然黒い竜が後を追って来たものだから、小さな白銀竜もさすがに驚いてしまった。何せ自分より大きい上に、青空に黒という強いコントラストがその存在感をさらに惹き立ててしまっている。それに、背中の黒い翼はところどころ擦り切れていて傷を帯びているのが気になった。

 ── シャーリー? 大丈夫、俺だよ。
 ── え!? もしかして、メア…なの?
 ── ああ、驚かせてごめんね。俺も一緒に飛びたくなったから……初めての空はどう?
 ── 空はすごく広いのね、飛んでいてとても居心地が良いわ。
 ── そっか、それは良かった。
 ── …それよりもメア、その翼は大丈夫なの? 傷付いていてすごく痛そうだよ…。
 ── ああこれは……生まれつきなんだ。大丈夫、痛くはないよ。…でも長時間は飛べないから、俺はそろそろ降りるね。
 ── あ、待って! 私も一緒に降りるっ!!

 上空でくるりと旋回する二竜を眺めていた皇は、まるで保護者のような気分を覚えていた。白と黒の異なる性質をもつ二人。色や形も含めて…全てが対照的だ。でも、こうして仲良く身を寄せ合う彼らは本当の意味での兄妹だと感じることができる。
 流れる血は違っていても同じ仲間 ── 家族であることに変わりはない。

 皇が待っている草原へ降り立った二竜は一息ついた後、それぞれの翼で身体を覆った。シャーリーは白い光、メアは黒い闇に包まれる。しばらくすると彼らは疑似的な人の姿へと変わっていた。
 メアは褐色の肌と金髪・金色の瞳を持つ少年だ。裾の擦り切れている黒いTシャツに焦げ茶の短パンを穿いている。首から下がっているのは丸いプレートの付いたペンダントだった。これは飛び立つ前と同じ姿である。
 一方シャーリーは、初めて人前で別形態を披露することになった。開いた翼の間に現れたのは、白い肌に白銀の長い髪・銀色の瞳を持つ幼い少女の姿だった。その身に纏っているのはフリルの付いた白いワンピース。耳には銀のピアスが付けられていた。思っていた以上に可愛らしい姿だったので、メアも皇も呆然となったのは言うまでもない。
 そんなシャーリー自身も初めて人の姿になったため、珍しそうに両手両足を確認する。これが人という生き物の姿。なんとなく不思議で楽しい感触だと思った。それらをしばし堪能し、シャーリーはその場でくるりと回ってみた。ワンピースがふわりと揺れ動くのを見て、照れくさそうに顔を上げた。
「えへへ~…私の姿、どうかな…??」
「え、あ……か、か、可愛いよっ! うん、すごく可愛い! 皇兄もそう思うよな?」
「あ…うん、びっくりしちゃったよ」
「ほんとう!? わぁ~嬉しいなぁ♪」
 にこやかな笑顔を浮かべたシャーリーは軽いステップで辺りをるんるんと回り始めた。嬉しさを表現するように踊る姿はまるで白い妖精のようだ。元気な彼女を眺めていたメアは、無意識のうちに自分の抱いていた想いを告げていた。
「…俺も、嬉しいよ。やっとシャーリーに逢うことが出来て、本当に良かった」
 ステップの傍らで彼の声を聞いていたシャーリーはピタリと動きを止めた。それからきょとんと瞳を丸くさせる。それに気付いたメアは慌てて口元を隠すが言ってしまった後ではもう遅い。シャーリーを見れば、いったい何を言っているの?と言いたげだ。
 でも、彼女はメアと同じ類。すぐに何かを理解したようだった。彼の想いは自分も知っている。その真剣な気持ちは、ずっと前から傍で、近くで強く感じていた。今更疑問に思うことなんて何もないはずだ。そう、今自分がすべきことは……。
 シャーリーはメアの傍に寄ると彼の手を取って、銀色の瞳を金色の瞳に重ねた。
「え、シャーリー…?」
「うん…メア、ずっと言いたいことがあったの。あのね……」



 ── 私を待っていてくれて、本当にありがとう。私もメアに逢うことができて嬉しいよ。



 それは他には聞こえない、メアだけに伝えられた専用思念伝達だった。とはいっても、二人の様子を見ていた皇に言わせれば、聞こえなくてもなんとなく分かってしまったが。でも、それはあくまで想像の領域。その瞬間、シャーリーの声と言葉はメアだけにしか聞こえない特別なものだった。
 メアはすぐに反応が出来なかった。まるで頭の中が真っ白になってしまい、何を言えばいいのかわからなくなる。けれど、目の前にいる妹のような少女が満面の笑みを浮かべていることに気付いて、自然と笑顔が浮かんだ。そして、思ったままの言葉を口にした。
「ねぇシャーリー、これからはずっと一緒にいられるね」
「うんっ!」

 互いに笑顔を見せ合った二人は再び草原の中を駆けだしていった。生まれたばかりのシャーリーは何の抵抗もなく世界に順応し、メアも仲間が出来てとても嬉しそうだ。
 彼らを見守っていた皇も、終始穏やかな笑みを浮かべて彼らを追うように歩き出した。



 これから先、新しい時間が流れ始める… ──。



- END -

2009年掲載。「竜」が誕生する時の物語でした。

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