魔女と暗黒騎士
プロローグ
始まりは、彼らの力を欲したからだろう。
いつの時もそうだ。大きな力の存在を知ってしまうと、内に潜む野心と好奇心を焚きつけて、誰もが手中に収めようと興味を抱く。
彼らの存在は、瞬く間に世界に知れ渡っていた。
だからこそ、数多の好奇心を引き付けて、幾度となく繰り返される追撃を呼び寄せた。
彼らとは、エンデバーグ王国の騎士魔導隊に所属する二人の実力者のことだった。
一人は魔導士。名前はロア。
紫黒の髪に紫の瞳を持つ彼女は、生まれつき高い魔力を秘めており、それは神が与えた至福と称された。魔法に関しては生まれ持った高魔力の存在も大きいが、努力による勉学で培われた知識も相まって、彼女の魔法は全てにおいて完璧だった。
もう一人は魔剣士。名前はセディト。
蒼い髪に蒼い瞳を持つ剣士は、巧みな戦術と剣術を備えており、軍で最強の魔剣士とも謡われた。彼が操るのは魔力で形成される魔法剣。その剣刃はあらゆる敵を引き裂き、負けなしだった。
*
世界は魔界からの襲撃を余儀なくされていた。
正確な記録は定かではないが、世界の遥か上空に出現した空間の歪みは周辺の空を赤黒く染め上げ、魔界オルセイアと繋がった。魔界の魔王による宣戦布告だった。
なぜ魔王は世界へ進撃しようと考えたのか、理由は未だ不明である。
世界の人々は魔界から押し寄せる恐怖に怯える日々を過ごすことになった。だが、このまま黙って見過ごすわけにもいかない。世界の各国は、住まう人々を守るために己の軍事力を以て襲い掛かる脅威と戦うこととなる。
大きな国ほど軍事力に比例して国防能力は高かった。大国に住む人々の生活はほぼ平和を保たれており、脅威への心配は少なかった。
けれども小さな国にとって人々の平和を維持することはなかなか困難であると言えた。軍事力はあっても到底大国ほどの強さには敵わず、押し寄せる脅威を振り払うためには多くの犠牲を要していた。
誰もが国を守りたいと願い、強い愛国心があれば良かったが、小国へ従事するものは士気が下がってくると次第に大国への憧れを抱くようになる。
そのため小国の軍事力は日々縮小されていくばかりだった。
そんな時、耳に入った情報があった。
とある大国に従事する二人の強者のことだった。
彼らの力が一方でも入手できれば、この国を立て直すことが可能かもしれない。
その一途な想いが、後に小国を亡国へ変貌させることになろうとは、考えもしなかったことだ。
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