Other Side Story 兄と親友
約束 ~闇に差し込む光
最初は約束だった。
ただ生きているだけの、目的のない毎日。
そんな闇に差し込んだ光は、今まで抱くことがなかった感情を呼び起こした。
知らずうちに導かれ、自分の認識する以上にたくさんのものを手に入れて、だからこそ無くしたときの喪失感は大き過ぎた。
今更、引き下がることは出来ない。
行く宛のない感情は、再び闇の中へ溶け始める。
最後に交わした約束だけが唯一、闇に染まる自分を抑制していた。それだけが自分を光の中へ引き戻し、生かそうとしている。
いつ闇に沈んでも構わない、その考えを否定するように。
そして、いつしか約束は想いへと形を変える。
すべてを果たすための出逢いは、止まっていた時を奏で始め、新たな思考を掻き立てる。
「お前を護ってくれと言われた。それが俺に課せられた最後の約束……何が何でも果たそうと誓った。今までたくさんのものを無くした喪失感、感じたことのない悲しみ、そして寂しさ。約束を果たすことで嘆いてもどうにもならない感情から解放される、そう信じて、そうなりたいと思っていたんだ」
少年が護るべきものは一人の少女だった。
護らなければならない。この命が尽き果てるまで。
使命感にひたすら背中を押され、少年は生きてきた。
忘れてはならない約束。
それが徐々に自分の心に宿る気持ちに変わっていると知ったのは、再び蘇ろうとしている恐怖が訪れた時だった。
少女に危険が迫ると、少年はいても立ってもいられない。既に二度も味わった喪失。彼女を失えば自分はきっと壊れてしまうだろう。ようやく自分の手で掴もうとしているものを、絶対に手放したくなかった。
護らなければならない。
そうではなく、自分は彼女を護りたい。
課せられた使命感は己の意志へと受け継がれる。約束でもあるけれど、時が過ぎた今では何よりも自分自身の想いとして浸透していた。
「もう約束なんかじゃない。俺は、本気でお前を護りたい」
伝えるには時間が掛かった。もちろんすぐには信じてもらえない。覚悟はしていた。
でも、それでもいいと思った。
彼女の傍にいられるだけで、護ることが出来るから。
これから先も、ずっと ──。
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